人気のユーチューバーやインスタグラマーに自社製品やサービスの紹介してもらうことで、認知拡大や購買、ファン(ロイヤルカスタマー)化につなげる手法として大きく注目されています。
そこでこの記事では、
- そもそもインフルエンサーって何?
- インフルエンサーマーケティングをしたい
- インフルエンサーマーケティングの効果をさらに高めたい
という方のために、インフルエンサーマーケティングの基礎から応用まで詳しく解説していきます。
ぜひSNSマーケティング施策の幅を広げるヒントとしてお役立てください。
インフルエンサーを起用した「インフルエンサーマーケティング」とは? メリットや選定ポイントについて解説
ここでは、インフルエンサーマーケティングとは何か、メリットやインフルエンサー選定の際の基礎的なポイントについて紹介します。
インフルエンサーマーケティングとは
インフルエンサーマーケティングは、主にSNS上で大きな影響力をもつ「インフルエンサー」に製品やサービスをPRしてもらい、口コミを通して購買など消費者の行動に影響を与えるコミュニケーション型のマーケティング手法です。
企業が消費者に対して直接メッセージを発信する従来型のマーケティングと比べ、インフルエンサーマーケティングでは消費者の視点を取り入れた共感性と訴求力の高いPRにより商品やブランドに対する認知や購買意欲の向上を実現することができる手法として大きく注目されています。
インフルエンサーマーケティングの例▼
たとえばこちらはYouTubeの人気ユーチューバー「ヒカキン」さんとファッションブランド「ユニクロ」のコラボ動画(PR)です。
約900万人という膨大なヒカキンさんのファン(YouTubeフォロワー)へ一気に情報を届けることができ、没入感のある魅力的なPRによって製品への興味関心や購買意欲を高めることに成功しています。
インフルエンサーマーケティングの市場規模
画像:【市場動向調査】2023年のソーシャルメディアマーケティング市場は1兆899億円、前年比117%の見通し。2027年には2023年比約1.7倍、1兆8,868億円に|株式会社サイバー・バズ
サイバーバズ/デジタルインファクトが2022年に行ったソーシャルメディアマーケティングの市場規模調査によると、2022年のインフルエンサーマーケティング市場は615億円。
2025年は1,021億円、さらに2027年には2022年比約2倍の1,302億円規模に成長する見込みとなっています。
画像:【市場動向調査】2023年のソーシャルメディアマーケティング市場は1兆899億円、前年比117%の見通し。2027年には2023年比約1.7倍、1兆8,868億円に|株式会社サイバー・バズ
さらに同調査によると、ソーシャルメディア(SNS)マーケティングの市場規模も2025年に1兆4,000億円を超える成長をする見込みと試算されています。
新型コロナウィルスの影響によるオンラインシフトに伴いSNSの利用者が増えたことで、消費者に寄り添いコミュニケーションができるインフルエンサーマーケティングには今後も大きな注目と期待が寄せられています。
そもそもインフルエンサーとは?
「インフルエンサー」とは、人あるいは世間に対して何らかの情報を発信し、感情や行動に大きな影響を与える人物を指します。
主にSNSで積極的に情報を発信して人々から共感や信頼を獲得している人物・団体で、一般的にSNSのフォロワーが多い特徴があります。
SNSフォロワー数の規模によってもインフルエンサーの性質が異なってきます。
- トップ/メガインフルエンサー(100万人~のフォロワー)
世間の知名度が非常に高いインフルエンサーでタレントや芸能人などが挙げられる。トップインフルエンサーをフォローしているインフルエンサーの2次拡散もあり、情報が爆発的に拡散しやすい。 - マクロ/パワーインフルエンサー(数十万人のフォロワー)
テレビなどマスメディアの露出は少ないものの、SNSで大きな人気を獲得する有名インフルエンサー。ファッション、美容、グルメなど特定のジャンルに特化したカリスマ的存在。 - マイクロインフルエンサー(数万人のフォロワー)
特定のジャンルにおいて強い影響力をもったインフルエンサー。フォロワーボリュームがあり、フォロワーとの距離感も比較的近いことから、親近感・共感を獲得しやすく、購買など行動喚起にもつなげやすい。 - ナノインフルエンサー(数千人のフォロワー)
フォロワー数が比較的少ないものの友達感覚でのつながりが多いため、投稿への反応率(フォロワー数に対するいいね、コメントの割合)が高くなる傾向がある。
インフルエンサーマーケティングのメリット
注目されているインフルエンサーマーケティングですが、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
以下で詳しく紹介します。
メリット1:柔軟なマーケティング施策展開ができる
インフルエンサーマーケティングは様々な形で施策を行える点で優秀です。
たとえば、
- ギフティング
インフルエンサーの自宅に製品を送り、体験した感想をSNSに投稿してもらう。アプリなどのオンライン体験も可能。 - 現地訪問
インフルエンサーを店舗やイベント、観光地などへ招き、現場レポート。ゲストとして登壇してもらうことで集客も行える。 - 商品監修・コラボレーション
消費者視点と最新トレンドを取り入れたターゲットに刺さる製品・企画の監修やコラボアイテムの共同制作を行う。 - ライブコマース
ライブ配信にてインフルエンサーに商品紹介をしてもらう。リアルタイムの質疑応答が可能であり、不安を解消することでそのまま購買につなげやすい。 - アンバサダー
ブランド専任の広告塔として長期的なパートナーシップを結び、ブランドの魅力を発信してもらう。
また、
- ブランドの認知度を高めたい
「トップ/メガインフルエンサー」によりブランドの情報を爆発的に拡散してもらう。 - 製品の購入を促したい
「マイクロインフルエンサー」の消費者目線の口コミにより消費者を後押ししてもらう。
のように、自社ビジネスの形態やマーケティングの目的によって柔軟に施策を実施できることは大きなメリットです。
メリット2:ターゲティングがしやすい
ファッション、コスメ、グルメ、旅行など、それぞれのジャンルに特化したインフルエンサーはそのジャンルへの興味関心が高いフォロワーを多く抱えています。
したがって、起用するインフルエンサーにより年代別、男女別、ジャンル別でターゲティングが可能な点はマーケティングを行う上でメリットとなります。
たとえばファッションインフルエンサーに製品をPRしてもらうことで、ファッションに興味関心の高い人たちへインフルエンサーの口コミと共に自社商材を効果的に訴求することができます。
メリット3:消費者目線のレビューを発信してもらえる
インフルエンサーは企業発信の情報と異なり、実際に製品やサービスの良し悪しを「消費者目線で」丁寧にレビューしてくれます。
実際の消費者としての発信は説得力が高いため、見ているユーザーの興味関心や共感の獲得に貢献してくれるのは大きなメリットです。
さらに現行製品へのフィードバックによって品質改善や新製品開発にもつなげることも可能です。
メリット4:広告臭が少なく受け入れられやすい
インフルエンサーマーケティングは口コミによる商品やサービスのレビューが主な拡散方法となります。
人のコトバが介入することで一般的な企業の広告よりも広告臭が少なく見ている人から受け入れられやすいメリットがあります。
現代ではインターネット上の広告をブロックする「アドブロック」を導入しているユーザーも多くいますが、インフルエンサーのPRは通常のSNS投稿により行われるためブロックされずに情報を届けることもできます。
メリット5:口コミの拡散とUGCの獲得が期待できる
インフルエンサーはターゲットにとって共感性の高いコンテンツを生みだしてくれるため、質の良い「口コミ」がターゲット間でより拡散されやすくなります。
また、口コミはSNS投稿の形で拡散されるため、UGC(ユーザー生成コンテンツ)も獲得でき、ブランドの話題性や製品の信頼性を高めることにもつながります。
メリット6:オンライン販売と相性が良い
各SNSはURLを貼ったり、SNSのショッピング機能を活用することで自社のオンラインショップに直接遷移させることができます。
たとえば、インフルエンサーのPR投稿からユーザーをECサイトのキャンペーンに直接遷移させることで、商品への興味関心の熱量を低下させずそのまま商品購入につなげやすいなどオンライン販売のビジネスを展開している場合に大きく貢献してくれます。
メリット7:SNS(インターネット)上で行われるためデータが取得でき効果分析がしやすい
インフルエンサーマーケティングはほとんどがインターネット上で行われるため、リーチ数、エンゲージメント数・率、シェア数、サイト遷移数、製品購入数などデータの取得と分析が可能になります。
加えて「ソーシャルリスニング」のデータをもとに分析することで、高速でPDCAサイクルを回し継続的に施策効果を高めることができます。
メリット8:製品のイメージがつきやすい
インフルエンサーは、企業から依頼された製品を自分のSNS上において実際に使用し詳細で正直な感想を紹介してくれます。
フォロワーは、自分の好きなインフルエンサーが実際に使用している製品を見ることで「自分ゴト化」しやすく、具体的なイメージを掴むことが可能。
したがって、消費者に対して製品のイメージを伝えやすく、購買意欲を掻き立てることにつながります。
メリット9:SEO強化につながる
インフルエンサーの投稿に、企業の製品・サービス紹介URLを記載することでSEOを強化する結果にもつながります。
多くのユーザーはGoogleなど検索エンジンを使って商品について調べることが依然多い状況です。
そんな中、Googleの検索結果にSNSの投稿が表示されるケースも多くなっています。
特にユーチューバーにプロモーションしてもらったYouTube動画はGoogleの検索結果に表示されやすく、SNSだけではなく検索エンジンからのサイト流入・購買につなげるSEO対策としてインフルエンサーマーケティングが貢献してくれます。
インフルエンサーマーケティングのデメリット
インフルエンサーマーケティングは万能の手法と感じていただけていると思われますが、実施する際に注意すべき点(デメリット)もありますので、以下に紹介しておきましょう。
デメリット1:インフルエンサーの選定が非常に難しい
インフルエンサーマーケティングではインフルエンサーの選定により成否が分かれるといっても過言ではありません。
近年では「フォロワー数が多い」だけでインフルエンサーを選ぶのはナンセンスです。目的に沿った高い成果が見込めるインフルエンサーを選ばなければなりません。
そのため、インフルエンサー選定の際には、最低限以下の要素を検討する必要があります。
- ブランドとインフルエンサーの親和性
- インフルエンサーの投稿の質
- フォロワーからの反応(エンゲージメント)数・率
- インフルエンサーとフォロワーとの関係性
- インフルエンサーのコミュニケーション力
- 過去のPR投稿内容
- 過去のPR投稿への反応数・率
- インフルエンサーのフォロワー属性(年代・性別・興味関心)
- 過去PRの結果インサイトデータ(基本的に入手不可)
代表的なものを紹介していますが、これ以外に施策目的によって細かに選定する必要があります。
また、フォロワーを金銭で購入する「フォロワー買い」をしているインフルエンサーは、マーケティング効果を著しく下げるため、見極めて排除する必要もあります。
マーケティングの目的に沿わないインフルエンサーを選定してしまうと期待する成果が出ないため、インフルエンサー選定は繊細で難易度が非常に高いものと心得ておきましょう。
デメリット2:ステマによる炎上リスクがある
ステマ(ステルスマーケティング)とは、企業から報酬をもらって製品のPRを依頼されているにもかかわらず、そのことを隠し、「良いものを見つけた」とあたかも自然に製品を見つけたように宣伝をしフォロワーを欺く行為です。
ステマが発覚すると、炎上し、ブランドや企業が社会的信用を失う重大な事態に陥る可能性もあるため、インフルエンサーマーケティング実施の際には細心の注意が必要です。
デメリット3:炎上を回避するために高いリテラシーを維持する必要がある
ステマをしていなくとも、モラルや配慮に欠けたPRをしたとしてSNSで炎上することもあり得ます。
こちらはおもちゃメーカーであるタカラトミーのTwitterアカウントの投稿です。
同社はSNS運用に卓越しており、リテラシーも高いことで業界的に有名ですが、一つの投稿がもとで炎上しネガティブなニュースとして大きく取り上げられてしまいました。
人が情報を発信し、人が情報を受け取る以上、最新の動向を把握して高いリテラシーを維持することが必要となる点もインフルエンサーマーケティングを行う上で難しいポイントとなります。
デメリット4:インフルエンサーのコントロールが難しい場合がある
インフルエンサーマーケティングは、インフルエンサーという「人」が絡む性質上、コントロールしにくい場面が出てきます。
たとえば、インフルエンサーが自らの言葉・表現によりユーザーに対して製品のPRをする性質上、事前に丁寧なすり合わせをしておかないと企業の意図とずれた表現になってしまうこともありえます。
また、たとえばイベントに複数名のインフルエンサーを招待しているといった場合、体調管理、遅刻・欠席、当日の進行、などマネジメントする要素は多くなり、インフルエンサーのコントロールが大変になります。
もちろんインフルエンサーは、ビジネスパートナーとして誠意をもって対応してくれますが、予期せぬ問題に見舞われることもあるため注意が必要です。
インフルエンサーマーケティングを成功に導くために企業がやるべき事
ここまでインフルエンサーマーケティングの概要やメリット・デメリットを紹介してきました。
ここからは、実際にインフルエンサーマーケティングを行い成功に導くために企業がやるべきことを紹介しましょう。
1. インフルエンサーマーケティングを行う目的を適切に設定する
インフルエンサーマーケティングを行う際は、自社ブランドとターゲットとする消費者の熱量(購買フェーズ)に応じて施策内容を最適化させることで、効果を高めることができます。
以下は、新規ブランドの認知~購買まで一貫してインフルエンサーマーケティングを行った場合の施策例です。
ブランドの認知を広めるフェーズと、購買を促すフェースではインフルエンサーマーケティングの施策内容が変わってきます。
たとえば新規ブランドの購買を促すためにマイクロインフルエンサーに商品PRを依頼しても、そもそも認知されていない商品を人は買いません。
よって、まずは新ブランドの認知拡大を進めるために、複数のマクロ~メガインフルエンサーに依頼し商品を広く認知させてもらうことを目的としてマーケティング施策を行うとよいでしょう。
2. インフルエンサーマーケティングの施策目的にあわせて適切なKPIを設定する
また、インフルエンサーマーケティングの目的にあわせて効果を計測する必要もあるため、適切なKPIを設定しましょう。
各購買フェーズにおける代表的なKPI例としては以下のようなものがあります。
目的 | KPI例 |
認知獲得 | ・リーチ数(投稿を見たユーザー数) ・動画再生数 ・UGC数 ・CPM など |
興味関心 | ・いいね数・率 ・動画視聴完了数・率 ・コメント数・質 ・自社アカウントフォロワー数 ・URLクリック数 ・CPC・CPV など |
検索・調査 | ・投稿保存数 ・コメントの質 ・SNS経由サイト滞在時間 ・CPC・CPV など |
購買 | ・SNS経由サイト遷移数 ・購買・登録数 ・CPA・CPI など |
共有 | ・SOV(シェア オブ ボイス) ・ポジティブ/ネガティブコメント比 ・UGC数 など |
目的に沿ったKPIを設定していないと、適切な効果分析ができず、施策結果を見誤ります。
「今回のインフルエンサー施策の目的は何か?」を意識して目的に沿ったKPIを設定しましょう。
3. 自社ブランドおよび自社のターゲットと親和性の高いインフルエンサーを選定する
先にも紹介していますが、自社のターゲット層を多く抱えるインフルエンサーを起用することが大変重要です。
たとえば、自社ブランドのターゲットが20代女性の場合、「20代女性のインフルエンサー」を起用しても、実は30代男性のフォロワーが多いという可能性もあり得ます。
過去のPR投稿を確認して、丁寧にPRしているか、コメント欄のターゲットの反響は良かったかなどをチェックしておき、施策の効果を最大化させるインフルエンサーを選定しましょう。
また、フォロワーを金銭で購入する「フォロワー買い」インフルエンサーを排除するのも忘れないようにしましょう。
4. インフルエンサーを柔軟に管理しステマも防止する
インフルエンサーが円滑にPRを実施できるようにスケジュール管理や商品発送はきめ細かく行いましょう。
特にインフルエンサーが現地訪問する場合やライブ配信する場合は予期せぬアクシデントに見舞われる可能性もありますので想定できるリスクをあらかじめ排除することが重要です。
加えて、インフルエンサーのPR投稿はあらかじめ下書きをチェックさせてもらい、ブランドの意向に沿っているか、ステマになっていないかも確認することも忘れずに行いましょう。
5. インフルエンサーに裁量を持たせて力を発揮できるように努める
「あれも伝えてほしい」「この情報も入れてほしい」とブランド側からの要求が多すぎると、自由度が無くなり、インフルエンサー本来の魅力を発揮できなくなってしまいます。
いつもと違う雰囲気の投稿をインフルエンサーがしてしまうと、フォロワーが違和感を感じ、投稿への反応(エンゲージメント)が低くなってしまうためです。
ブランドはあくまで最低限のお願いをして、あとはインフルエンサーの裁量に任せることもインフルエンサーマーケティングにおいて重要なポイントとなります。
6. ブランドの世界観を損なわないSNSアカウント運用をしておく
ブランドはSNSアカウント運用を丁寧に行っておくことも実は重要になります。というのも、最近では、Googleなど検索エンジンではなくSNSから情報を集める人が増えているためです。
インフルエンサーの投稿を見てブランドに興味をもったユーザーは、ブランドのSNSアカウントやホームページををチェックして、センスや世界観、ブランドメッセージを確認します。
ブランドの公式SNSアカウントをチェックされたときに「イケてない」と思われるとユーザーの興味関心を損なってしまいますので、ブランドのSNSアカウントも丁寧に運用し、ファンを集めるよう努めましょう。